ビル・エヴァンス (Bill Evans) の狂気を見た演奏 Here’s That Rainy Day、そしてスローな楽しみ方

ビル・エヴァンス (Bill Evans) と言えばピアノトリオによるJazzの新境地を切り開いた巨人というのが一般的な評価だと思うし、私もそのことに異論はないが、私の場合、ビル・エヴァンス (Bill Evans) を初めて聴いたのは実はアルバム『Alone』だった。ピアノソロによるアルバムでJazz Piano Soloの新境地を切り開いたアルバムでもある。

その1曲目『Here’s That Rainy Day』。海辺に置かれたピアノから静かに音が流れ出てくるようなイメージの出だしから、アドリブに切り替わると一転し、ビル・エヴァンス (Bill Evans) 独特のフレーズが次から次へと紡ぎ出され、白熱し、やがてアドリブはクライマックスへと向かう。初めてこの演奏を聴いたとき、私はあまりに圧倒され、アドリブの中盤からクライマックスにかけての展開には狂気さえ感じさせられた。そして鳥肌が立ってきた。只者じゃない演奏。こんなすごいピアノソロがあるなんて。どこからが右手で、そしてどこからが左手で弾かれているのかさえわからない。アドリブの最後の方で奏でられる2小節くらいのポップス調のフレーズも1960年代後半から70年代にかけてのロックやポップスの雰囲気が感じられて面白い、と感じた。

アルバム『Alone』がグラミー賞 最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム賞を受賞していたことを後で知ったが、それでなくてもこのアルバムは素晴らしい。ピアノソロだけに、ビル・エヴァンス (Bill Evans) が表現しようとした思いがダイレクトに伝わって来るからかも知れない。

最近ではYouTubeでビル・エヴァンス (Bill Evans) のレアな映像を観ることができるが、それらの演奏を聴いていても、やはりこの人には凡人ではないキレた印象を受ける。演奏しながら、ますます深みにはまっていくような。

ビル・エヴァンス (Bill Evans) 以降最近のJazzピアニストに至るまで、その演奏を聴いていると、時々、ビル・エヴァンス (Bill Evans) の影響を受けているのがはっきりとわかる人たちに遭遇する。ビル・エヴァンス (Bill Evans) が後世のJazzピアニストたちに与えた影響がいかに大きいかが受け取れる。実際、私も摩訶不思議黄昏色楽団 (Magical Twilight Orchestra) を結成する前にビル・エヴァンス (Bill Evans) ばかり聴いていたころは、少なからずビル・エヴァンス (Bill Evans) 風のフレーズを無意識に弾いていたことがあった。

アルバム『Alone』を聴いてからしばらくの間、私はビル・エヴァンス (Bill Evans) に夢中になった。しかし、ビル・エヴァンス (Bill Evans) の場合はなぜか全てのアルバムを一挙に聴くのではなく、長い時間をかけて1枚ずつ、ゆっくりと聴いていきたいと思った。だから、大好きなのに未だに全てのアルバム、演奏を聴き切っていない。人生の中で折に触れて思い出した際にビル・エヴァンス (Bill Evans) のCDを買い足していく。そして、お酒を飲みながら、その夜はじっくりと買ってきたばかりのアルバムを聴く。音楽にロマンスを求めたビル・エヴァンス (Bill Evans) だからこそ、そんなスローな楽しみ方でもいいような気がする。

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